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東京高等裁判所 昭和53年(行コ)20号 判決 1980年2月09日

東京都杉並区和田一丁目一六番四号

控訴人

庭野林藏

右訴訟代理人弁護士

中條政好

同区成田東四丁目一五番八号

被控訴人

杉並税務署長

今井傅

右訴訟代理人弁護士

國吉良雄

右指定代理人

岩田栄一

中村政雄

金田晃

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一、求める判決

(一)  控訴人

1  原判決のうち控訴人敗訴部分を取消す。

2  被控訴人が控訴人に対し昭和三九年三月一二日付でなした控訴人の昭和三五年分の所得税にかかる再々更正処分および過少申告加算税賦課決定のうち総所得金額四九六万七七八〇円までの部分を取消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人とする。

(二)  被控訴人

主文第一項と同旨

二、主張

次に附加するほかは原判決事実欄第二記載のとおり

1  控訴人

大仁国際に対する融資による収入(本件収入)は昭和三五年度における控訴人の事業外収入であるところ、零細な飲食店業者である控訴人は旧所得税法(昭和二二年法律第二七号)施行細則(同年大蔵省令第二九号、昭和二五年五月一日改正)一八条の定めるところにより、被控訴人から同細則一六条に定める事業外収入の記帳義務を免除されているから、本件収入を控訴人の所得に加算する本件再々更正処分は違法である。

2  被控訴人

本件収入が昭和三五年度における控訴人の事業外収入であることは認めるが、その余は否認する。かりに控訴人が細則一八条による承認を受けていたとしても、そのことにより、本件収入について控訴人の申告義務および被控訴人の課税権限は何の影響も受けない。

三、証拠

(一)  被控訴人

乙第六ないし八号証を提出。

(二)  右のほかは原判決事実欄第三記載のとおり。

理由

一、当裁判所は、控訴人の本訴請求は、昭和三五年度の控訴人の総所得金額四九六万七、七八〇円を超える部分については理由があるが、その余の部分は失当であり、棄却すべきものと考えるが、その理由は次に訂正、附加するほかは原判決理由欄記載(但し原判決一三枚目-記録八九丁-表二行目から同二五枚目-記録一〇一丁-表六行目の「棄却し、」まで)のとおりである。

1  原判決一六枚目-記録九二丁-表八行目の「証人」から同一一行目の「各証言」までを「前掲乙第五号証の一および証人小林恒美の証言により真正に成立したものと認められる乙第五号証の二ないし九並びに証人滝口良光、同小林恒美の各証言」とあらためる。

2  同二二枚目-記録九八丁-表七行目の「五、八五〇円」を「四二、二二八円」と、同八行目の「なお、」を「しかし」とあらため、同裏四行目の「右」の次に「四二、二二八円から右重複金額三六、三七八円を控除した」を加える。

3  同二五枚目-記録一〇一丁-表六行目の「棄却し、」を「棄却すべきである。」とあらためる。

4  控訴人は、本件収入は昭和三五年度における控訴人の事業外収入であるが控訴人は旧所得税法施行細則一八条により同細則一六条に定める事業外収入の記帳義務を免除されているから本件収入を控訴人の所得に加算することは違法である、と主張するが、青色申告者についての右事業外収入の記帳義務免除は青色申告書の業種、業態、規模の実情に応じて記帳の簡易化を認めるに過ぎず、右収入についての申告義務およびこれについての税務官庁の課税権限に何の影響を及ぼすものでないから、控訴人の右主張は主張自体失当であり、採用することができない。

二、そうすると右と同旨の原判決は正当であり、本件控訴は失当であるから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条本文、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉岡進 裁判官 手代木進 裁判官 上杉晴一郎)

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